平成30年度の配偶者(特別)控除について
平成29年度税制改正による所得税法の改正により、平成30年度から配偶者控除及び配偶者特別控除が見直しされました。その結果、①妻の年収の上限が103万円から150万円に引き上げられる、②平成30年度より給与所得者(夫)の年収制限が設けられる、という制度変更がありました。
一方で、社会保険の夫の扶養に入れるかどうかの年収130万円の壁に変更はありません。その結果、年収130万円※1まで働き、社会保険は夫の扶養に入りたいと考える方が増えるのではないかと考えます。
※1 従業員数501人以上など一定の条件を満たす会社については年収106万円
1.配偶者控除及び配偶者特別控除とは
配偶者(特別)控除とは、夫が納める税金を計算する上で、扶養している妻がいると有利になる制度です。平成30年度と平成29年度の配偶者控除及び配偶者特別控除の金額は「Ⅰ表」の通りです。
【Ⅰ表 ー 夫の給与収入が1,120万円以下の場合】
配偶者(妻) の給与収入額 |
配偶者控除 | 配偶者特別控除 | ||||
103万円以下 | 103万円超 141万円以下 |
141万円超 150万円以下 |
150万円 | 150万円超 201万円以下 |
201万円超 | |
平成30年度 の控除額 |
38万円 | 38万円 | 38万円 | 38万円 | 36万円 ~3万円 |
0円 |
平成29年度 の控除額 |
38万円 | 38万円 ~3万円 |
0円 | 0円 | 0円 | 0円 |
夫の年収制限が影響しない場合、平成30年度の配偶者控除及び配偶者特別控除の金額が増加する対象が拡大しています。妻の給与収入額が103万円超201万円以下の場合、配偶者特別控除の金額が増加します。
2.平成30年からの配偶者控除及び配偶者特別控除
(1)配偶者控除及び配偶者特別控除の金額
平成30年度からの配偶者控除及び配偶者特別控除は、「Ⅱ表」の通り算定されます。
【Ⅱ表】
配偶者控除 配偶者特別控除 |
給与所得者(夫)の年収 | ||||
1,120万円以下 | 1,120万円超 1,170万円以下 |
1,170万円超 1,220万円以下 |
1,220万円超 | ||
配偶者(妻) の年収 |
103万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 | 0円 |
103万円超 150万円以下 |
38万円 | 26万円 | 13万円 | 0円 | |
150万円超 201万6千円 未満 |
36万円 ~3万円 |
24万円 ~2万円 |
12万円 ~1万円 |
0円 | |
201万円6千円 以上 |
0円 | 0円 | 0円 | 0円 |
(2)平成30年度制度変更による影響
夫の年収が1,120万円以下の場合、配偶者控除及び配偶者特別控除の金額は増加し、有利な制度変更となります。
一方で、夫の年収が1,220万円超の場合、配偶者控除及び配偶者特別控除の金額は減少し、不利な制度変更となります。
3.平成29年までの配偶者控除及び配偶者特別控除
(1)配偶者控除
妻の年収が103万円以下なら、夫はその年収にかかわらず配偶者控除として38万円を給与所得から控除することができます。
(2)配偶者特別控除
妻の年収が103万円超なら、夫はその年収にかかわらず配偶者特別控除として妻の年収に応じた控除額を給与所得から控除することができます。
4.配偶者(特別)控除に対する考察
平成30年度からの配偶者(特別)控除を有利に活用するためには、①②の対応を考えます。
①年収130万円まで働く。⇒ 夫の社会保険の扶養に入りつつ、年収を増やす
②年収201万円6千円未満まで働く ⇒ 配偶者特別控除を取りつつ年収を最大化させる
①の働き方が最も効率的な働き方であると考えます。
一方で②の働き方は配偶者も社会保険に加入する必要がありますので、収入獲得の効率性は下がりますが、社会保険に加入しますので将来の年金収入が増えるというメリットがあります。
最後に、配偶者(特別)控除などの税制優遇を受けつつ、効率的に働くことも重要と考えますが、一方で、今後夫婦で年収をいくら稼いで老後に備えるかの将来設計をきちんとしていくことも重要かと考えます。