相続時精算課税制度のメリットとデメリットについて

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、
財産の所有者が、親の世代から子の世代に生前贈与をする際、現行の暦年型の贈与に代えて、贈与時に贈与財産に対し2,500万円の特別控除(通算)した金額に一律20%の税率による贈与税を支払い、その後の相続時にその贈与財産と相続財産とを合計した価額を基に計算した相続税額から既に支払ったその贈与税額を控除することにより、贈与税・相続税の納税をするという制度です。

1. 相続時精算課税制度のメリットについて

相続時精算課税制度のメリットは、一度に2,500万円もの多額の財産の贈与が可能なことです。また、この制度がメリットになる財産の要件としては、会社株式や投資財産など今後価値の上昇が見込まれる財産です。

なぜなら、贈与税は贈与した時点の財産の評価額に基づき算定されます。今後、財産価値の上昇が見込まれる財産については、価値が上昇する前に相続時精算課税制度を利用して贈与すると相続税・贈与税の金額を抑制することができます。

例えば、
2018年、A会社株式(1株250万円)が10株あったとします。この時点で相続時精算課税制度を利用して贈与した場合、A会社株式10株全部を無税に贈与することができます。
2019年、A会社株式が1株500万円に上昇したとします。この時点で相続時精算課税制度を利用して贈与した場合、A会社株式5株しか無税で贈与することができません。

10年後、A会社株式が1株2,500万円に上昇し、相続が発生したとします。その際のA会社株式を除く相続財産が1億円あったとします。

2018年に贈与した場合、
相続財産    = A会社株式 + その他財産
(1億2,500万円)  (2,500万円)  (1億円)
(10株分)
2019年に贈与した場合、
相続財産    = A会社株式 + A会社株式   + その他財産
(2億5,000万円)  (2,500万円) (1億2,500万円)  (1億円)
(5株分)    (5株分)

相続時精算課税制度を1年利用遅らせただけで、相続財産が倍になってしまっています
仮に相続時精算課税制度を利用せず、生前贈与をしなかった場合に相続財産は以下の通り算定されます。

相続財産    =  A会社株式  +  その他財産
(3億5000万円)  (2億5000万円)   (1億円)
(10株分)

増加した相続財産に相続税率10%~55%及び控除額を考慮して、相続税額を算定しますので、相続財産額を抑制することが重要です。

2. 相続時精算課税制度の適用要件について

相続時精算課税制度の適用要件は以下の通りです。

(1) 贈与者

贈与者(財産の所有者)は、贈与の年の1月1日において60歳以上の受贈者の父母及び祖父母であることが必要です。

(2) 受贈者

贈与者の推定相続人で、贈与の年の1月1日において満20歳以上の者です(孫も含みます)。

(3) 財産

金銭に限らず、財産の種類、金額、贈与回数に制限がありません。なお、相続財産の評価に際しては、一般に小規模宅地等の評価減の特例は認められますが、相続時精算課税制度では、特定計画山林についての評価減の特例だけ適用され、小規模宅地等の評価減は適用されません。
なお、この制度による贈与財産は物納の対象にはなりません。

3.相続時精算課税制度利用にあたってのPoint

上述の通り、今後価値が上昇する株式等の財産の贈与をする際に利用すると、大きな金額の贈与をすることができるというメリットがあります。

一方で、一度相続時精算課税制度を利用すると、それ以降、現行の暦年型の贈与を適用できなくなるというデメリットがあります。暦年型の贈与であれば、非課税枠110万円(年間)の利用ができますし、相続前3年以前に受けた贈与については相続財産から除くことができます。
また、贈与した財産の評価が値下がりした場合や税制が改正された場合などに相続時精算課税制度を利用したために、かえって相続税が多くなる可能性もあります。

そのため、相続時精算課税制度を利用する場合、今後の資産の価値の上昇見込みを慎重に判断する必要があると考えます。

相続時精算課税制度を利用するかどうか検討する際には、必ず税理士に相談して実行するかを決めるようにして下さい。

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